わをん

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『ブランコ』

サーカス小屋の高い梁。そこから垂れるふたつのブランコにスポットライトが当たり、ドラムロールが鳴り響く。長い間信頼し合っていると思っていたブランコ乗りの相棒は、知らぬ間に私から心を離して年若い男を追いかけている。舞台の上では仮面のように笑顔を貼り付けてはいるが、鬱陶しがられていることは他の団員にも知られるほどに明白だった。
ブランコで逆さまに揺れながら思ってしまう。今夜ここで飛び移ってくる相棒の手を離したらどうなってしまうだろう、と。思っただけで本当にそうするつもりは無かったのだ。スポットライトの光で何も見えないまま、観客の悲鳴だけが耳に響いた。

2/2/2024, 3:32:01 AM