欲しいものが手に入らなかった。気になっていた新作アイスクリーム、季節ものだからって買う気になっていたホットスナック。それから最後に、毎回いちケースだけのチョコレートアソート。
俺が頻繁に買うからか、最近は見かけるたびに補充されていたのに紙箱は空っぽだった。……実のところそれはちょっと気恥ずかしかった。店員に「やっぱこれ買うんだ」と思われていそうだし。
けれども無い。無いなら、仕方ない。
伸ばした手を下ろして、そこから冷えていくような心地を味わった。振り返ってみれば執着だったんだろうと客観できる。たぶん恋と呼んでもいい。相手が人間だったなら友人たちだっていけいけ押せ押せと騒ぐような気持ち。
ついには全身へとまわって染まり切った悲しみに委ね、コンビニを後にした。他のところへ探しに行く気にもならない。この店舗のあれが欲しかった。あれが食べたかった。舌で溶かして飲んで胃液に混ざるだろうそれを想像して訪れていた。しかし今日で終わる。
いつかまた見るのなら、ただの消費者の顔ができるといい。
恋を失うって書くのなら、これだって失恋だった。
6/4/2023, 12:27:16 AM