愛があれば何でもできる?
ここで踊ってみて。 真夜中の歩道橋で年上の彼女が言った。
僕はよろっとしながら一回転した。
続けて、
あそこの交番のおまわりさんがこっち見るぐらい、大声で愛してるって言って。
僕は目一杯、夜の空気を吸い込んで、愛してる、と叫んだ。
次いで、
あの1番キラキラしてる星、取ってきて。
僕は屈伸運動してから、助走をつけてジャンプした。隣のビルを飛び越えて雲を突き破り、宇宙へ。ぐっと手を伸ばす。もう少し、もう少し。
……ってところで目覚ましが鳴ってさ、と駅前でハンバーガーを食べながら年上の彼女に話した。
あのさ、あなたの中の私って、そういうイメージなの?
そ、そんなこともないけど。
ふうん。まあいいけどさ。でも星は無理でも、愛してる、はできそうじゃない?
え?ど、どうかな。おまわりさんの仕事の邪魔したら悪いし。
できないの?
どうだろう。その時になってみないとなんとも……。
私はできるよ。
え?
お手本見せようか?なんなら今ここで。 彼女がすっと立ち上がる。
待って。わかった。わかったから。お手本なくてもわかるから。
あら、そう。 彼女が笑顔を浮かべながら座った。
楽しみだなぁ。ねぇ、いつ言ってくれるの?
ええっと。 僕は渇いた喉をコーラで潤した。
健康診断が終わってからでいいですか。コンディションを整えてからじゃないと……。
はい、いいですよ。 今年1番のいじわるな声で彼女が言った。
5/16/2024, 12:20:05 PM