燈火

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【消えた星図】


待ちに待った週末。僕は君の家を訪れる。
こんなに楽しみにしていたのには理由がある。
君の家だから、だけでなく、ある物を試すから。
それは高額ではないけど自分では買わない物。

「もうちょっとで終わるから待っててね」
君は机に置いたそれのセッティングを進める。
その間に僕はクッションを集めて寝床を確保。
寝転がっても背中を痛めない程度に敷き詰める。

準備を終えた君が、僕を見て不服そうに目を細めた。
「なに巣作りしてんの?」なんとも言えない表現。
手早くぽいぽいっとクッションを散らされた。
「ん」と指示されて、しぶしぶベッドに腰掛ける。

「まだ明るいかなぁ」君がリモコンで電気を消す。
遮光カーテンを閉めたが、部屋はぼんやりと明るい。
どうせなら真っ暗な空間で楽しみたいと意見が一致。
日が沈むまで話していれば目も慣れるかもしれない。

「そろそろ始める?」外もだいぶ暗くなってきた。
「だね」君は立ち上がり、球体の電源を入れた。
直後、目が眩むほど綺麗な星空が天井に広がる。
いまこの瞬間、ここは僕らだけのプラネタリウムだ。

室内の絶景に、思わず二人して感嘆の声を漏らす。
「あれ星座じゃない?」「え、確かにそれっぽい!」
説明書があったはず、と君が箱をひっくり返す。
でも、うまく見つけられずに手間取っているようだ。

「スマホで調べればいいよ」即座に不満の声が飛ぶ。
「せっかくロマンチックなのに」口を尖らせる君。
まあ、それもそうだ。僕は手にしたスマホを置いた。
無知だからこそ、新しい星座を作る楽しみがある。

10/16/2025, 2:26:12 PM