猫背の犬

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窓越しに見えるのは変わりゆく季節と、あの子の後ろ姿。その情景をただ見つめているだけで日々は過ぎていく。それでもの心は十分に満たされていた。この細やかな幸せは永く続いていくと信じていたけれど、あの子は夏が始まる前にどこか遠い場所に行ってしまった。永遠の終わりを知った僕の心に生まれた空洞。そこにはどうしようもない侘しさが募っていく。もう二度と満たされることはないと悟りながら今もまだ窓の外を見つめている。先に立たない後悔のせいで、こんなに苦しい思いをするなんて知らなかった。知りたくなかった。そんな僕を横目に燦々と照る太陽。その眩さに手をかざし、瞬きを何度か繰り返す。窓越しに見えるのは、あの子じゃない子の後ろ姿。せめて一言だけでも言葉を交わせていたら、こんなに苦しくなかったのだろうか。せめて僕があの子のように外で遊べる健康な体をもっていたら、これほどまでの後悔は抱かなかったのだろうか。すべてはないもねだりで、たらればでしかない。喉に痞えていた言葉は嗚咽に変わり、僕をさらに惨めにさせた。

7/2/2023, 4:51:16 AM