“春一番だね〜”
彼女はガードパイプに腰掛けて、川を眺めながら言っ
た
“あ、花びら落ちてきたよ”
私は雪のように降ってくる花びらに手を翳した
花びらはまるで舞うようにひらひらと私の手をすり抜
けていく
“む、取れない、、、”
“あはは‼︎あれでしょっ?落ちる前に花びらをキャッチ
できれば願いが叶うとかなんとか?”
彼女はこっちを見ながら笑っていた
私はぷくっと頬を膨らませて彼女を見た
“でも、本当に今日は良い天気ね”
また川を見た彼女につられて私も同じ方向を見た
“本当だね”
2人の髪を風が撫ぜるように吹いている
あぁなんて本当にのどかなんだ
遠くで声が聞こえる
“ずっとこんな日が続けばいいね”
そういう彼女の目は寂しさに滲んでいた
私はただ頷いた
声がだんだんと近づいてくる
私たちの間にまた風が通り抜けた
私たちはもう一度お互いの顔を見て
そして
猛ダッシュした
走った
私たちはとにかく走った
“待て‼︎‼︎逃げるな‼︎
私の、、、私の限定品のドーナツ食べたでしょ〜‼︎‼︎”
悲痛な声がこだまする
鬼の形相で追いかけてくる友達であろうその人から
私たちは必死に逃げた
あぁ、神さまどうか、この陽気で友達の怒りが少しで
も静まりますように、、、
『現実逃避』より
2/28/2023, 3:44:04 AM