三行

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僕は冬が好き。
寒〜い冬に毎朝登校しなくて良いという最高の冬休みがあるし、何よりもおじさんが帰ってくるからだ。


宿題は嫌だけど、別に勉強が嫌いな訳では無いし、おじさんが帰ってくる年末には終わらせる事にしている。
年明け前に、僕たちはおじいちゃんの家に集まるんだ。
親族みんなで、年越しそばを食べる。僕はお蕎麦がアレルギーだから、いつも一足先にお雑煮を作ってもらっている。おばあちゃんの作るものはどれも美味しいんだよね。

おじさんは、僕のお母さんのお兄ちゃんらしい。
毎年、大きくなったなあって言ってくれて、僕はいつもぐわんぐわんと揺れながら撫でられている。
これは結構好きだったりする。お母さんはあんまり、そういうスキンシップ?をしないから、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいんだ。

他にも好きなことはある。
それはおじさんの事が好きな理由でもある。
「よし、明日は早起きするぞ!一緒に寝るか!?」
「いやもう僕五年生だよ、ひとりで寝れるよ」
「ええ〜いいだろぉ〜?な、そう言わずにさ!」
結局一緒のお布団に押し込められて寝るのがここ数年の事だった。これも、嫌じゃない。本題は次の日だ。
体を揺すられて起こされる。まだ寒いし夜じゃないか?となるが、まあ割と毎年こうだ。
おじさんは、僕を連れて早朝に出かける。
ある時は釣りに行ったし、ある時は深夜に出かけて車で見晴らしのいい所へ行き、親族に声をかけて希望者を引き連れて初日の出を見に行ったりした。僕はなぜか何も言ってないのに連れていかれた。うん、でも綺麗だったよ。移動中寝てたとはいえ眠かったけどね。


おじさんは写真家で、普段はあちこちをウロウロとしている。
「年末くらい顔を出せって皆うるさくてなあ、しゃーねえから来てんだよ、あっ!勿論お前に会いにも来てるぞ!」なんて、話していたことがあった。
冬の写真は、殆ど僕を連れて一緒に見せてくれた。



「ほら、おじいちゃん家行くよ、忘れ物無い?」
「うん、大丈夫!宿題は終わってるし、カメラも持った!」
「そう、じゃあ行こうか」
母と二人、並んで新幹線に乗りに行く。おじいちゃん家はちょっと遠いからね。
人混みの多いところでだけ、お母さんは僕と手を繋いでくれる。それが嬉しいから、毎年ちゃんとおじいちゃん家に行きたいんだ。



「お!よく来たな!」
おじいちゃん家に着くと、玄関にはニカッと笑うおじさんが居た。
「あれ!?おじさんもう居るの!?早くない!?」
思わず驚いてしまった。
「こらこら、静かにな。一軒家って響くもんだぜ〜隣の家までは割とあるからいいけど、おじいちゃんが怒っちゃうからな!」
「う、うん、気をつける……!」
「もう帰ってたんだ、珍し〜。今回は何しに行くの?わかってると思うけど危ないところは」
「おーおーわかってるとも!俺がコイツを危険なとこに連れてくわけねえって!安心しろ!……なあ?」
「うん!」
僕は即答した。いつもおじさんは、僕が楽しめるところに連れていってくれる。たまに興味がない所もあるにはあるけど、持てるようにと色んなお話を聞かせてくれるんだ。
「ねえおじさん、僕も知りたい!どこ行くかもう決まってるの?」
「ああそうだな、何ヶ所か考えちゃいるんだが……」
続く言葉も、このやり取りも、きっと毎年恒例。

「「内緒だ」ね!」

「ははっ、わかってるじゃねえか!そーだ、ナイショだ」
「楽しみ!」
「2人とも、まだ玄関いるの?さっさと中に来たら」
お母さんがリビングの部屋の扉から顔を覗かせている。
「はーい!」「ほーい!」
「あ、手洗いうがいしなよ、色々触ったんだから」
「はーーい!!」「はいはーい!俺もしよっと!」
「あれおじさん今来たところなの?」
「そーだよ、ほら行くぞ」



「冬は一緒に」2023/12/18

12/18/2023, 10:36:44 AM