たぬたぬちゃがま

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ちりん。
風鈴が風の訪れを教えてくれる。
「あっづぅうううううううい!!!!」
でも私にとってはそれどころじゃないくらい、今日の気温は高かった。


「何この温度!外気温38度!?ハァ!!??」
寝起きに見た温度計の気温を見て叫んでみるが、温度計は一目盛も動かない。急いで勝手に消えたエアコンと扇風機の電源をつける。来たれ文明の機器。
部屋を冷やしている間、いっそ風呂にでも入ろうか、とぼんやり考えていると、ベッドから手がいきなり伸びてきてあっという間に引きずり込まれた。


「おはよ。……もう昼近いか?」
「暑い!!熱い!!離れて!!」
彼の抱擁は夏の暑さによってより熱苦しくなる。
ぐぐぐ、と顎と胸を力一杯押すが、彼は一切動じない。これが男女の筋肉量の差か。悔しい。
「……昨日はあんなに求めてきたのに?」
「うっさい!!!」
枕を顔に叩きつける。顔の熱さは暑いせいだ。絶対そうだ。そうに決まってる。
風鈴が鳴らす清涼な音すら今の私には囃し立てるように聞こえて、その場から離れるため、そして汗を流すべくお風呂場へ直行した。


【風鈴の音】

7/13/2025, 2:48:08 AM