みけねこ

Open App

香水
開け放たれた窓から風が吹き込む。
どこからかふわりと香る、君の香水の残り香。
君自身はこの部屋にいないのに、まるでいるように錯覚させる香り。

蘇る記憶。感情。季節。容姿。温度。声。

あまりにも突然の別れ。すぐに理解できなくて。
君の幻に声をかけそうになって、幻聴に応えようとして。

あぁ、君がいなくなったことなんて嘘なんじゃないか?
こんなにも、君の存在が僕の心に染みついているから。

君のことだから、僕のことを驚かそうとして、隠れているんじゃないか?だったら、もう出てきてくれよ。
「もういーかい?」
僕以外、誰もいない部屋でつぶやく。
まだ香る君の香水の部屋の中。

前回の君と最後に会った日の続編です。(みけねこ)

8/30/2023, 11:23:50 AM