多田野一人

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遠い足音
なかなか聞こえて来ない…今日も忙しいのかな…
窓の向こう側は、綺麗な茜色から、群青色に変わり、夜の帳が降り始めて来ている…
なのに、あの人の足音が聞こえて来ない…近所の人の足音ばかりが、響いている…
テーブルの上には、夕食の準備もしているのに…さっき点けた灯りが、白々と照らしている向かい合った食器が、なんだか、よそよそしい…
本当は、わかってる…あなたの足音が、聞こえ無いこと…屹度あなたは、私の事を憶えてなんていないだろう…でも、それでも、このテーブルで、向かい会う姿を妄想している…だから…聞こえない足音を待ち続けて…

10/2/2025, 2:42:34 PM