金零 時夏

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手ぶくろ

同性愛(ボーイズラブ、BL)の要素があります。誤字脱字の確認はしておりません。その2つに注意してお読みください。

「あ、」
しまった、朝随分とバタバタしていたせいでてぶくろを家に忘れてしまったようだ。遅刻ギリギリだったため、全く気づかなかった。ふっ、息を吹くだけで白い雲が溢れ出す、それだけでどれだけ外が寒いかわかるだろう。手袋やマフラーは手放せない季節だ。
はあ、と深くため息を着く。最寄りの駅まで若干距離があるから、寒気の中に暖かい手をそのままにして歩くと、あっという間に真っ赤になって霜焼けになってしまう。そんなことを考えていたら、時間を忘れて思いに耽ってしまったようで教室には誰もいなかった。帰りはバスで帰るし、都会の方だから結構な頻度でバスが来るから時間には余裕がある。
重たい鞄を背負って、足早に教室を出た。外までは行かないがひんやりとした廊下に小さく身震いする。誰一人通らない自分の吐く息と新しめの上靴が立てる音だけが響いている。そのどこか寂しい音になぜか涙がこぼれそうになる。
たたたっと階段を駆け抜けて下駄箱から靴を取り出す。踵が踏み潰されて少し変形してしまったスニーカー。気に入りすぎて少し黒くくすんでいた。
扉を開けると、ひゅー、と口笛のような風が吹いた。肌をつんざくような寒さに耐えきれず、一瞬体が怯んでしまった。
その時、前に人影があった。知ってる人かな、と少し覗いてみる。
「あ、遅かったね。大丈夫?心配したんだけど。」

思わずは?と声が出た。そこにいた男は俺の彼氏、、恋人だった。俺もれっきとした男だが、俺が彼奴に一目惚れでアプローチを続けた結果、相手から告白してもらったのだ。
「え、なんで蒼空がそこにいるの!寒かったでしょ、俺遅かったよね。」

勢いよく飛びついて、蒼空を責めた。寒い中一人で、鼻を赤くして待つなんて風邪なんて引いたらどうするんだ。ぷく、と可愛らしく頬を膨らまして睨みつける。どうせ可愛くなんてないのだろうけど。
「え、何その可愛い顔、めっちゃいい。」
ぽぽぽ、と顔に熱が集まっていく。
「っ~!!」
ぎゅ、と抱き寄せられる。長い時間外で待っていたはずなのに、彼の胸は暖かかった。少しの沈黙の後、蒼空が口を開く。
「ねえ、いつもの手袋は?なんかもふもふがなくて寂しい。」

「それが忘れちゃって…」

「えぇ!寒かったでしょ!絶対持ってきなって言ったじゃん!」

「ごめん!今日バタバタしてて、持ってくるの忘れちゃった!」

抱きついたままなのも忘れて話に夢中になっていた。ぱっと蒼空から離れる。、、否、離れようとした。
話さないとでも言うようにぎゅっとさらに強く抱き締めてくる。それが何故か心地よくて、胸に頭を埋めた。

しばらくそうした後、そろそろ帰ろっか、と手を繋いで歩き出す。あっ!となにか思いついたように彼が振り向く。
「ねえねえ、手袋、1個貸したげる!もう片っぽは、手、繋ぐから暖かいよね。」
最後の方は少し小さく萎んでいった。蒼空の顔はほんのり赤い。その赤みは、寒さからなのか、それともあの言葉のせいなのか、俺には分からない。

お久しぶりです。今回は上手く行きました。メリークリスマス!(過ぎたけど)

12/28/2022, 7:15:32 AM