森川俊也

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俺は昔から、異質だった。
周りがはしゃいでいる中ずっと1人だった。
遊びたくないわけじゃない。
むしろ、遊びたかった。
それをさせなかったのは俺の異質さだ。
周りの人間が
「今日さ、私のお母さんがね。」
「へぇそうなんだ。私のところはね。」
なんて話しているのを聞いているとムカムカして仕方がない。
なにせ、それのせいで俺は異質なのだから。
世間は個性を尊重しろという。 ならば『俺』も尊重されてもいいのではないだろうか?
周りは『私』しかいない。
それでも、その中に『俺』がいて何が悪い。
ずっとずっと考えてきていた。
俺は本当におかしいのだろうか。
向かう先には雨が降っていた。

やがて、俺は別のところへ行った。
そこには『私』もいた。けれど、『僕』もいたし、『あたし』もいた。残念ながら『俺』を見つけることはできなかっただけれど、それでも、ここでは『俺』は否定されなかった。
未だに俺には分からない。
どちらが正しいのか。
前の『私』達も、自分たちとは違うという恐怖から逃れるために『俺』を嫌がったに違いない。
そういった人間としての本能的なものを持たない今の住民たち。
どちら等というのはないのかもしれない。いや、ないのだろう。
それでも、俺は考えることをやめられない。
向かう先の雨は柔らかい雨になっていた。

11/7/2024, 9:09:33 AM