『高く高く』
たまには、散歩でもしてみる?
美大の卒業制作を描く合間で、彼女に誘われた。
季節は初夏。
といっても、真夏かと思うぐらい暑くて、空気はじめじめしている。
2人で他愛ない会話をしながら、しばらく歩いた。
日差しが容赦なく肌を焼いて、ぐっしょりと汗で濡れたTシャツが背中に張り付く。
疲れたねー、と彼女が言った。私もそれに疲れたね、と返した。
道端の自販機で、炭酸を買った。
透明な清涼飲料水の中で泳ぐ泡が、きらりと光る。
あー、なんか。
青春だなあ。
ふと、そう思った。
卒業制作で毎日忙しいし、これと言って楽しいこともないけれど。
こういうどうでもいい時間が、青春なのかな。
私は炭酸水の蓋を回す。
プシュッと音をたてて、蓋が外れた。
半分ほど飲み干してから、
真っ青な空に、高く高くそれをかかげた。
10/14/2024, 10:55:55 AM