名無しの夜

Open App

 頬に描く、その雫は

 白く塗りつぶして気取らせない感情を

 象徴するのだという


 笑いながら、泣き

 泣きながら、笑う


 遠い昔、

 生きることすべてが演じることだった
 人々がいたのだという


 演じることなく生きれることは

 きっと、幸せ



 でも

 演じる場もなく

 それでいて
 本心を気取らせない仮面をつけて

 気持ちの欠片たる象徴も描けず


 ほんの時折

 苦しさに、天を仰ぐ


 雨粒を頬に受けて


 すぅと流れ落ちる感触に


 忘れかけた何かを取り戻した気がして


 眠るように、目を閉じた

4/22/2024, 6:00:25 AM