《好き嫌い》
彼は、負の感情をあまり表に出さない。
他を害するような正義に反する行動に対し怒りはしても、その人自身を厭う感情は決して見せない。
私とは正反対の人。そんなところを尊敬してる。
私はすぐに感情を表に出してしまう。嫌な相手はとことん遠ざける。
だからこそ、不安になる。
私は彼にどう思われているのだろう。
闇に魅入られし色を持つ者…彼にそう断じられた私。
監視を目的として私と同居を始めた彼は、それでも私を手荒に扱ったりはしない。
相手が誰であろうと分け隔てない優しさを持つ彼だからこそ、嫌われたくはない。
闇の者に近寄られても。
そうは思われたくないから、私はこの想いをひた隠す。
あなたの隣で高鳴る鼓動も熱くなる頬も必死に抑え込む。
もうすぐお昼。会議が終われば昼食の時間。
また彼の顔が見れると逸る気持ちを抑えつつ、部屋の扉が開くのを待とう。
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午前の会議が終わり、本部の個人部屋で待たせていた彼女を伴い、食堂へ向かう。
「今日の日替わりのメニューは何でしょうね?」
ニコニコしながら弾む声で彼女は問う。
「今日はほうれん草とベーコンのキッシュに蒸し鶏のサラダだそうですよ。」
彼女の方を向きながらそう答えれば、目元を赤らめ破顔しながら喜んでいた。
「そうですか!楽しみですね!」
ウキウキ。ワクワク。
彼女の全身からはそんなオノマトペが躍り出るようで。
踊る会議に荒んだ心も爽々となり、足取りも軽くなる。
そうか。彼女の好む食事はこれなのか。
自宅の献立にも取り入れようかと、心のメモに書き記しておいた。
6/13/2024, 3:35:54 AM