飛花

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ほしいものはない。
けれどわたしに誕生日が近づいてくる。
彼女は言う。
「何か欲しいものある?」。
ない。
ないよ。
わたしは今の生活に満足しているのだから。
これまで以上に何かを望むことなんてできない。
今の幸せを噛み締めていたいから。
そういうことは彼女には通用しないけれど。
「なんでもいいんだよ」。
だからこそないのだ。
彼女にわざわざねだってまでほしいものなどない。
本当に欲しいものはその場で手に入れてしまうから。
彼女の手をわずらわせてしまうのが申し訳なくなるから。
「しょうがないなー、特別にこの私がプレゼントを選んでしんぜよう」。
偉そうな彼女。
そうであってこそ彼女なのだけれど。
「君。私とデートしようか。それをプレゼントとしよう。勿論、プランは私が考える」。
何を欲していないとしても彼女はわたしが一番欲しいものを見抜いてくれる。
本当に大好きだ。




#ないものねだり

3/26/2024, 10:17:26 AM