小絲さなこ

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「一番そばで一番先に」


子供の頃に彼女が言っていた。

「年を取ったらみんなおじいちゃんおばあちゃんになるんだよね。おばあちゃんになりたくないなぁ……」

俺たちにとって『おばあちゃん』というものは、近所に住む意地悪ばあさんだった。
まだ幼い彼女は、年を取ると全員あの意地悪ばあさんみたいになると思っていたのだ。


「そんなことあったっけ」

そのことを彼女に言ってみたが、すっかり忘れていた。
いや、忘れていても構わないのだけど。

「ほんと、よく覚えてるよねぇ」

彼女は子供の頃のことをあまり覚えていないようだが、俺は色々なことを覚えている。

一番近くで、ずっと彼女のことだけを見てきた。

だから、もうすぐ孫も産まれるというのに、いまだに彼女の新しい一面を見ることに驚く。

そしてきっと、この先も一番に見つけていく。



────まだ知らない君

1/31/2025, 8:28:53 AM