「たった一つの希望」
糸である。
触っただけで切れてしまいそうなほど細くて繊細な糸。
希望とは、そういうものだと教えられたのは9歳の頃であった。
母に言われ、父に教えられ、兄によって教え込まれた。
希望とは、ほとんどありはしない幻想、妄想の類であると。
私は生まれたとき確かに生きていたが、死んでいた。
兄の代わりに過ぎなかったのだ。私はいなかった。
思考を止めた、息をするのもやめてしまいたかった。
この世に、自分が自由に生きれるとは思えなかった。
口を開くのをやめた、感情を出すのもやめてしまった。
それほどまでに、私は幼子でありながら、諦めた。
ただ、それでも、やはり人とは哀しい生き物だった。
ずっと。
ずっと、ずっと、祈っていた。
自由に生きたいと、生きていたいと。
私は、自由に生きて良い、それだけを言われたかった。
誰かに救われるのをずっと待っていた。
細い、か細い、繊細な糸に縋り付くしかできなかった。
3/2/2024, 12:29:19 PM