題:名前
ーー〇〇〇姫、どうなさいますかっ!?
ーー落ち着いて。まずは前線部隊を派遣しましょう。それから……。
ーー〇〇〇姫!クッパ軍がもうすぐそこです!
ーーもう……。分かりました。ここは私が対処します。
ーー!?ですが、〇〇〇姫……!
ーー大丈夫、安心して。私には、国民を守るという責務があります。それに、私は、この子も守らねばなりません。
そうやってこちらを向く、〇〇〇姫と呼ばれた女性。
儚げに、それでいて力強く微笑みかける。
……あれ?
なんて、名前、だったっけ。
✧ ✧ ✧
忘れた名前。忘れ去られた名前。
思い出せない。その名前の響きすらも、何もかも。
まるでそこだけ記憶が綺麗さっぱり無くなってしまったかのように、何一つ思い出せなかった。
ーーあの〝記憶〟は、何?
あのよく分からない〝記憶〟の断片であろうもの。
一瞬だけ聞こえた〝クッパ軍〟という言葉。あれはクッパ軍との戦闘の記憶ということなのだろうか。
だが、クッパ軍は最近動き始めた。まだロゼッタが幼い頃には動いていないはず。
なぜなら、クッパ軍の敵対する方には〝〇〇〇〟という脅威があったからだ。
(なら、あの〝記憶〟は、私には関係のないことなの?)
もしあの〝記憶〟がロゼッタとは全く関係のないことなのだとしたら、その真実には辿り着けない。
忘れ去られた響きーー。
虚しく、ただ人々の記憶から抹消されるのを待つだけの、悲しい存在。
その抹消されるのを待つものが、〝〇〇〇〟だったら……。
きっと〝〇〇〇〟は、クッパ軍との戦闘を全て一人で対処したのだろう。
そんな英雄が忘れ去られるのは、なんとも心苦しいことだ。あってはならないことだ。
(……そもそも、私とあの人とは何か面識があったかしら)
ロゼッタは、〝記憶〟にでてきた〝〇〇〇〟という人との面識は全くない。
つまり、ロゼッタとは無関係ということが、段々濃厚になってきた。
失われてしまった響きーー。
その〝〇〇〇〟の響きが、消えてしまう。跡形もなく。
その失われてしまった響きを取り戻すためにも自分は必要なのだろうと、ロゼッタは必然的に確信した。
その鍵が、ロゼッタなのだから。
お題『失われた響き』
11/29/2025, 10:35:00 AM