あひる

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お題「同情」



同情される人生なんてまっぴらごめんだ

四半世紀の人生、多くの失敗や成功を経験してきたが、全て自分自身で選んできたことだ。
だからどんなに困難でも、どんなに辛くても陽気な性格を貫いてきた。

「なのになぜ私はこんなに落ち込んでいるのだろう」

真昼の公園のベンチに座っていた男は、悲壮感に満ちた表情をしながら小さく呟いていた。

「何であの時ッー」

言葉にならない感情が今にも溢れそうな時、無意識に大声で叫びそうになったが、奇怪な目で見てくる人達を見て、一瞬我に返って声を殺した。
ここは真昼の公園だ
犬の散歩をしてる女性、ランニングしてる男性、公園にあるさまざまな遊具では数人の子供達が元気に遊んでいる。
それにしても視線が痛い。

「せっかくの休日の真昼に俺は何をしてるんだろう」

いつもなら友人と遊んだり、趣味に没頭してる時間だ。
ただ公園のベンチに座り、景色を眺める趣味がある人がいてもそれを馬鹿にする気はない。趣味なんて人それぞれだ。
ただ私にとって、今公園のベンチに座って景色を見ている事は、辛い現実を忘れる為にどうすればいいか、思考を巡りに巡らせて辿りついた結果である。

昨日同僚に言われた事を思い出してみた

「私さんは勿体ないよな、おれだったら私さんとは結婚できねーな」
「たしかに、私さんはねー見た目がねぇ」
「はは、そうかもなあ」
「でも私さんって性格はいいじゃん性格は!」

他愛もない会話だ
同僚の2人も笑ってる。私も笑ってる
悪意の無い3人の会話、その一部分だけずっと心に残っていた。
見た目で結婚出来ない事への同情なのか、そう感じてしまっていた。


私は現在独身だ、最近結婚ラッシュが来たみたいで高校や大学の頃の友人の結婚式に何度か参列させてもらった。
結婚願望が無いわけではない。
できないのだ
自分でも分かってる

見た目が原因だ
なぜ人は第一印象は見た目から判断してしまうのだろう、そんな分かりきった事を考えていた。
私の見た目は大学の頃から変わってないのに。そう呟いていると

「ちょっと君?」

「!?」

ベンチに座ってる私に声をかけてきたのは、青い服を着ていて強面の大柄な男性だ。警察だ

警察に言われた言葉で、「ああ、また見た目で判断された」私は再び深い悲しみに覆われた

「ブーメランパンツ一枚で何してるの?あっこれボディビル用のパンツ?凄い筋肉だね、身長は2.5メートルくらい?大きいねえ、着れる服が無いのかな?んーとりあえず警察署行こっか」




2/21/2023, 10:21:03 AM