『愛を注いで』 机上に放ったキャラメルは溶けてしまった。 先から喧しい耳鳴りの奥、遠い場所で汽笛が鳴いている。あれはきっと愛の唄だと。筋張った手で頭を撫でたあの人はいない。 父さん。とうさん。泣いて縋ることも許さなかった。許されていなかった。 長い休みの僅かな隙間。鉄の小箱でゴトゴト揺られ、遠いとおい町の外れのボロ屋まで会いに来てくれた人はもういない。
12/14/2023, 12:43:14 AM