maria

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「好き嫌い」

気づいたら クラスで浮いていた。
どんなきっかけなのか
自分では見当もつかない。

ゲームのルーレットを回して
針が止まった子を
「3,2,1……スタート」で
生贄にするように
クラスみんなが、一斉に
よそよそしくなった。
話しかけても会話が続かない。
避けられたり、ものがなくなったり、
プリントが回ってこなかったり。


私はただ 他人事のように
周りを観察した。

人を好きになる気持ちって
自分では止められない。
気づいたら好きになっている。
誰にでも覚えのある感情だ。

ということは
人を嫌いになる気持ちだって
止められないのだろう。
誰にでも覚えのある感情だ。

人と人との交わりは
好きと嫌いを織り合わせた短編小説。

だから

「どうして私を避けるの?
 どうして私を嫌うの?」

などと問いただすのは愚の骨頂。
本人にすら説明がつかないのだから。


なるほど。
そういうことよ。
独り言をいいながら 
納得しての帰り道。


     「そういうとこだよ!」


数々の「カワイイ嫌がらせ」に
全然動じない私に
リーダー格のエリカが
私の後ろで 憎々しげに吐き捨てた。


ん? 

振り返りながら
私は彼女に笑顔を向けた。

私はカワイイあなたが好きだけど
あなたは私が嫌いなのね?

好きも嫌いも ご自由に。

   私も自由にさせてもらうわ。

小首をかしげて笑顔の私と
唇をかみしめて怒る貴女の短編小説。




          「好き嫌い」




6/12/2023, 2:07:11 PM