海月 時

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「だから、星に願うんだ。」
そう言う彼女を、ずっと見ていたいと思った。

「君は星が好きかい?」
彼女は、僕に問う。僕はいつもと変わらずに答えた。
「嫌いだよ。」
彼女は嬉しそうに笑っていた。

彼女と僕は幼馴染だ。大学に入っても僕達の関係は変わらず、僕は未だに彼女の世話係だ。子供の頃から彼女に振り回され続けた結果、僕は彼女の行動については大体理解できるようになった。それでも、毎日のように交わすあの質問だけは理解できない。彼女はどういった意味で僕に問うのだろう。

「今日も祈ってるの?」
「もちろんさ。」
正直、星に願うのは止めて欲しい。嫉妬してしまうから。
「そういえば、君は何故星を嫌うのかな?」
言ってしまっても良いの?君が好きだから、星に嫉妬してしまっているのだと。恋敵である星が嫌いなのだと。
「本心を言ったら君は、僕を嫌いはずだよ。」
「嫌わないさ。」
「何でそう言い切れるの?」
「君が私を嫌った事はないだろ?だからさ。」
あぁ、恋とは本当に厄介。
「まぁ、君の本心は大体分かってるのだけどね。」
「えっ!?」
「君は私が好き、だから恋敵である星が嫌いなのだろ?」
「…いつから知ってた?」
「さて、いつからだったかな。」
こいつ、だから僕しか友達が居ないんだよ!

「じゃあ、あの質問って何の意図があったの?」
「君がまだ私の事を好きかの確認さ。」
「悪趣味すぎる。」
「知ってるよ。だって私は、君に好きで居て欲しいから、嫉妬して欲しいから、だから、星に願うんだ。」
あぁ、僕の惚れた彼女は、とんだ悪女のようだ。でも、目を離すことができなかった僕は、とっくに彼女に心酔しているみたいだ。

2/10/2025, 2:14:51 PM