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目の前が真っ暗になった

精神的な比喩ではなく、
ただ単に視野が

しかし次の一言で、
それは2通りの意味になってしまった

「優しくしないでくれない?
これ以上私を傷つけないで」


背中に回された手が、
私の浮き出た肩甲骨をさすり、
後頭部の刈り上げを撫でる

顔をあげようとしたが、
思いのほか強い手の圧に
未だ私の視界は黒一色を示す

「もう誰も好きになりたくないの、わかるでしょう」

恋焦がれた声が震えている
優しさという毛布であなたを包むつもりだったのに、
いつから私は武器を手にしていたのだろうと
暗闇の中で呆然とした

そして私は
その言葉で全てを失った
唯一の長所も、手持ちも、
描いていた幸福な未来も


首筋に温かな湿りを感じ、
暗闇は一層深さを増す

このまま

この人の熱を感じたまま
暗闇の中に溶けて消えたいと
心の底から願った

5/2/2023, 12:59:42 PM