はじめ

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【無色の世界】

いつもつまらなかった。学校も家も、みんなみんな同じように見えていた。みんなで同じことを学び、同じことをして、正しければ褒められて駄目ならけなされる。ただ、それだけのルールに乗っ取った世界。
全部が、同じ色に染まって見えた。
何色でもない、つまらない色。

彼女だけは、違って見えた。
校門を校舎へと歩く姿。それだけなのに、艶めく黒髪、真っ白なシャツに紺のスカートの制服、きらきらと光るチャームをつけた鞄まで。
無色の世界に、唯一の鮮やかさ。
毎朝見ているのに、今朝も見とれていると、こちらを向いて微笑む。その、柔らかなピンク。
「おっはよ」
声まで青や赤に彩られ、輝く。
(羨ましい)
挨拶を返しながら、そう思う。
(自分も、色の世界にいたかった)
彼女の隣にいても、叶わないその願い。
今日もまた、鮮やかな彼女を見つめる。

4/18/2024, 1:02:51 PM