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「キンモクセイ」


金木犀の香りが街に漂う頃になると、貴方の事を思い出す。

貴方と歩いた道。
笑い合った街角。
2人で頬を寄せて嗅いだ金木犀の木。
バカみたいに些細な事で笑って、はしゃいで。
毎日がただただ幸せだった。

あの木も今はもうなくなって、街並みもあの頃とはすっかり変わってしまった。

私と貴方の関係も終わって、今はもう貴方がどうしてるのか、生きているのかもわからない。

でも、毎年何処からか金木犀の香りが漂う季節になると、必ず貴方の事を思い出す。
打算も妥協もなく、ただ純粋に貴方に恋をしていた自分を思い出す。

そして、出来るならもう一度あの頃に、と願う自分を見つけてしまう。
叶わない願いと分かっていても、もう一度あそこからやり直せたら、と夢想する自分を見つけてしまう。

それは、甘酸っぱくて、切なくて。
でも、これ以上ない位輝いていた私の、大切な想い。
きっと、一生忘れる事のない、大切な想いだから。

11/4/2025, 11:41:31 AM