恋心は常に空っぽだ。どんなに人肌や唇や囁く愛の言の葉を重ねても満たされない。逆に、どんどん汚れていくだけだ。
それだから綺麗に見せようと、空っぽの恋心に香辛料をとにかく撒いて、香味野菜を無意味に詰め込んで、自身の切り刻んだ血肉もこれでもかと押し込み、表面を油とか溶き卵とかアザランまでも塗りたくって、煮たり焼いたりして、白くて美しい皿の上にお行儀良く揃えるのさ。文字通り、心を込めて作りましたと相手に差し出せば、向こうも心の底から虜になるだろうよ。
なに? 心臓を使った料理なんて、結局血生臭いと。そしたら、君はどんなハートの食事をしたいのかい。シャシリック? 冷たい水で心臓をよく洗うのが、美味しくなるひと工夫なのか。
なるほど、恋に熱っぽいハートを冷ますと、より味に深みが出るのか。あとは、お好きな野菜と一緒に油で揚げればいいと。味付けは不要。塩胡椒さえもいらない。
臭みさえ浄化する高温の油に熱されて、温かさに満たされた恋心の味は、どんなだろうね。舌にまとわりつく肉の脂と口内に広がる肉の香り、そして噛むたびに溢れ出る肉の旨み。永遠に舌の上で転がしたくなる美味しさなのか、それとも、一生火傷を負う熱を帯びているのか。
空想の中で食事を楽しんでしまったが、きっと君がこのハートフルな料理を食べたら、ときめいて愛に満たされるに違いない。そのシャシリックなるものが、忘れられないのだろう? 愛するように笑みをこぼしているのが、何よりの証拠だ。
私と君の心臓で、そのシャシリックを作ってみたら、どんな味になるのか試してみないか?
(250706 空恋)
7/6/2025, 12:21:59 PM