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〜澄んだ瞳〜

あれは蝉の鳴き声がうるさかった夏の最中
養護施設の実習を受けた時のこと

家庭環境に問題があり施設で暮らす
小学4年生の少年の瞳が
20年経った今でも忘れられずにいる

その少年は一緒に暮らす他の子どもたちに
暴力を振るってしまう問題児だった

普段は屈託のない笑顔で無邪気に遊ぶ彼だが
感情が昂ると衝動を抑えられないところがあった

その彼が数日後に一時帰宅するらしい

あいにく、その一時帰宅は実習の最終日だったので
彼が一時帰宅から戻ってくる姿や感想は聞けていない

普段はシャイで自分から
私に話しかけることのなかった彼が
駆け寄ってきて一時帰宅することを伝えてきた

その瞳は純粋無垢そのものだった

彼の喜び様を思い出すと今でも微笑ましくなる

実習最終日、彼を施設から送り出すと
担当教員にそのことを伝える
すると思わぬ返事が返ってきた

実は一時帰宅は初めてではなく
今までに何度もあると言う
その度にアザを作って帰ってくる…と

それでも彼は父親、母親、兄妹が
暮らす場所へ行くことを喜び望んでいた

彼は今、どうしているだろうか

7/30/2023, 5:45:45 PM