〜予感〜
「実は君と初めて会った時に、この人と仲良くなるんだろうなと思ったんだよね。」と彼が言う。
何故そう思ったのかと問うと、「周りの人達がワイワイはしゃいでいる輪の中に入らずに、楽しそうに外から眺めていたのを見てそう感じた。」「なんか感覚が似てるなぁと思って。」と当時を思い出すかのように答える。言葉を一つ一つ丁寧に紡ぐような彼の話し方は魅力的でとても落ち着く。ずっと会話をしていたい。
ところで彼と初めて会った日は友人の結婚式だった。その日に仕事で大きなミスをしてしまった私は気持ちを上手く切り替えられないまま出席していた。心ここに在らずといった感じ。
気付けば結婚式の2次会。断り切れずに参加。いつもなら仲良しグループで楽しくはしゃぐところ、いまだに仕事の失敗が頭をよぎり上手く楽しめない。仲良くしてる様子をニコニコしながら眺めるのが精一杯。演技をしている気分になる。こんな祝いの場を個人の事情で暗い空気にしてはいけない……。
「みなさん楽しそうですね。」と彼が話しかけてきてくれた。「こういう雰囲気に慣れてなくて」とどこか恥ずかしそうな口調で語る様子に緊張していた心が緩み、自分でも驚くほど自然に会話をすることが出来た。
初めて会った日を思い出して彼に言う。「失敗って悪い事ばかりじゃないよね。」
10/21/2025, 5:40:41 PM