執筆リハビリ文章まとめ

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 カーテンの隙間から漏れる朝日は、木漏れ日のようにも思えて好きだ。
 休日。目覚ましを鳴らさずに寝れる日だが、私はいつもと同じ時間帯に目が覚めた。
 新しく買い替えたカーテンは思うよりずっと部屋に映えていて、それだけで気分がよかった。
 前のやつは、彼が買ってきてくれたものだったから。
 彼がいい男だったかどうかは、正直、判断が難しい。一人暮らしの女の家に転がり込んで、しばらく住んでいたから、てっきりずっと一緒にいるつもりなのかと思い込んでいた。私もあの頃は、若くて何も知らない無邪気さがあった。
 彼が「新しい家が決まった」と出て行く時、せめてカーテンだけは持って行ってと私は告げた。彼からの贈り物はすべて捨ててしまいたかったのだ。
「うん、わかった。君の言う通りにするよ」
 一世代前の言葉で言うなら、彼は甲斐性無しだったのだと思う。おそらく私のことを好きでいてくれたけれど、寄り添う覚悟を持てなかった。
 新しくなったカーテンを見る。彼の匂いはもうこの部屋にはない。
 それほど憎んだわけでも恨んだわけでもないが、やはり心のどこかはチクリと痛む。あくまでも優しい男だったから。
 窓を開ける。秋の入り口の風が涼しい空気を運んでくれる。
 これからは、歩く。急ぎ過ぎもせず、走りもせず、ただ着実に、一つ一つの物事をきちんとして、ゆっくりと人生を進む。
 私の物語は私のものだ。
 このカーテンも、私のものだ。
 風がふわりと私の鼻腔をくすぐる。今日は晴れてるから散歩にでも行こうと、その日の予定を楽しく考え始める。


#カーテン

10/11/2023, 12:19:49 PM