記憶の地図
人生には地図は無い。
今何処を歩いているのか、何処に向かっているのか、誰にもわからない
わからないまま突き進む不安の中、
人の温もりに思いがけず触れる時、
また、ひとりでも歩いて行こうと、
思えるのだ…。
祖母が亡くなったとき私は母と二人で貧しい暮らしの中に居た。
祖母は何とか自分の娘と孫に出来ることはないか、考えたのだろう。
祖母は同居の息子、母からすれば長男である兄に相談し手持ちの家を貸してあげてはと話したのだ。
しかし、兄にも事情があった。
事故で嫁に行けないかもしれない娘の将来のためにその空き家は貸せないと。
兄には兄の親としての想いが、祖母には祖母の親の想いが交錯する。
親子喧嘩をしたその夜、祖母は言った。明日あの子に会いに行くと。
1人で毎晩過ごす孫の私に会いたいと言ったその夜遅く、祖母はあの世へ旅立った。
亡くなってから数年してこの事情を知ったのだった。
私達母娘の伺い知らぬところで、子供を想う親の想いを知る事になった
迷子になりながら今日までよく生きてきたなと思う。
私を慕う孫のため何が出来るだろうか?
少しでも迷わない地図を残してあげたいのだが、子供達には必要なさそうである。
6/16/2025, 6:13:47 PM