この世界に一つだけ、手放し難いモノがある。
それは愛とか恋ではなく。
漠然と"大切"なだけのもの。
けれど譲りたくないし、捨てたくないし、手放したくないし、何より他の誰かに奪われるのだけは耐えられない。だから手に入らないと分かっていても手を放せない。
我儘だろうか?
大切だと思えばこそ、手放すべきなのだろうか?
そんな事が出来るのなら悩みなんてしないけど。
「ああ、美しいなぁ。今日も夕日は綺麗だよ」
なんて意味もなく無邪気に貴女が笑うから。
代わりなんて何処にも無い大切な人の笑顔に笑いかけ、『そうだな』なんて当たり障りのない、けれど愛しくてたまらない。
今日も今日とてそんな返事をするのだ。
【題:世界に一つだけ】
9/9/2024, 3:03:41 PM