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 目の前の顔はぽかんとおおきく口を開けた。
 いったい何を考えているのかよく分からない濁った瞳とわずかに尖った輪郭線、感情も厚さもうすい唇、血色が良いとは表し難いしろい顔。目下に鎮座する隈を見るに重度の寝不足らしい。
 それをじいっと見つめて、ふ。と、己が今いる場所を思い出す。
 ここは───そう、自宅の脱衣場。

 あれ。じゃあ、だれ?

 刹那的乖離のち暗転。
 その間は、実にたったの三秒にも満たないものであったのである。


▶刹那 #71

4/28/2024, 3:14:01 PM