作品66 すれ違う瞳
「お待たせしました、こちらご注文の品です。」
そう言われて机の上に真っ白なクリームがたっぷり乗っかったシフォンケーキと、そして彼女の目の前には微かにチョコの匂いが漂うチョコケーキが置かれた。
ありがとうございますと言い、フォークを握る。彼女は瞳を輝かせて、食べていい?と聞く。笑いながらもちろんと返す。
二人でいただきますを一緒に言い、フォークを入れる。彼女がキャーっと小さく声を出した。可愛らしくて思わず笑ってしまう。二人で同時に口へ運び、食べる。
「美味しい!」
そう言って彼女がこちらに目線を渡した。一瞬目があったように感じる。嗚呼食べてしまいたいくらい可愛い。気持ちを隠しながら微笑みかけ、コーヒーを飲んだ。話しかけたくなるのを我慢して、音が鳴らないようそっと写真を撮った。
食べ進めながら、二人で話す。無くしてしまった三毛猫のぬいぐるみ。よく混むようになってしまったお気に入りのカフェ。最近飼い始めた黒いかわいい子猫。そして少しだけ仕事の愚痴。他にも色んなことを百面相しながら喋る彼女の姿は、自分のものだけにしたいくらい可愛かった。
「ごちそうさまでした!」
気づけばケーキが無くなっていて、彼女たちは会計を済ませようとしていた。急いでコーヒーを飲み終える。早くしないと、彼女たちが店から出ていってしまう。店員さんに謝罪をしながらお金を払い、急いで店から飛び出した。
ちょうど彼女は友達と別れて、一人で歩いているところだった。バレないように気をつけながら後をつける。
家につくまでの道のりで一度だけ彼女はふり返り、こちらの方をちらっと見た。一瞬、目があったように感じたが、すぐ逸らされる。前を向くとき、少し顔が強張っていた。その表情すらも愛おしい。
いつか、君の瞳をしっかり見つめたいな。
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作品5 子猫
より、お相手目線。
性別はお任せで。
この後に主人公が盗聴しているシーンを入れて作品5に共通点的なつながりをつくりたかったんですけど、あまり機械詳しくないんで諦めました。
5/4/2025, 2:06:58 PM