お題 夜が明けた。
(2025/04/28 書きかけor完全に書き換えるかも知れない。お題的に、もっと明るい話でも良い気がして)
終わった と
解放された と
そう感じた筈だった。
結局、1度壊れたモノは元には戻らないって話だ。
根源から遠く離れたって、記憶は無くならない。
花も開けば、残りは萎むか落ちるかだ。
誰もいない。月の明かりも届かない。
街灯の下だけが、映写機で映し出すかのように、黒と白を浮かび上がらせる。
時刻は、夜の11時半頃。
おぼつかない足取りで、最終バス停に降り立つのは、僕一人だ。
傘もない。
下を向けば、靴の半分が白に埋もれてしまっている。
やってしまったと気付いたのは…いや、起こしてもらったのは、申し訳なさそうな運転手の顔と声だった。
いや、こちらこそ。なんて、逆に心配を掛けて申し訳ない気持ちで一言「すみません。大丈夫です。歩ける距離なので」と、寝起きの頭をフル回転させ、降りた場所を確認した。
そこは、タクシーすら通らないど田舎の端の端だった。
途中で止めば良いが、この分だと、帰る頃には靴が完全に白に埋まるだろうな。
久しく雪を見ていなかったので、夜目に慣れてきた僕は、空からふわりと落ちる光景と、地面に真新しく出来る足跡を楽しんでいた…のも、数十分前だ。
流石に、疲弊した体でこの天候を数時間も歩いて帰るには、気分が沈むというものだ。
知ってはいるとは言え、普段余り歩くことの無い道を、記憶を手繰り寄せながら進むせいで、余計に脳が疲れを感じている。
いっその事、このままここで寝てしまおうかと、何度脳裏によぎった事か…。
消えてしまえたらと思う癖に、こういう時だけは、恥ずかしい終わりはごめんだなんて、我ながら何というか…いや、これが人間である証拠なのかも知れないが………
進めば進む程、明かりは消えていく。
自販機すらない。
空気は、少しづつ潮風の香りがし始める。
後は、岸壁近くまで出れば、よく知った道に出るのだが
「………雪が、途切れて、る……?」
ふらついてきた足を止めると、そこからピタリと分けられているかの様に、地面と雪の境目が出来ている。
その先は、岸壁のある場所だ。
妙な光景に思わず後ずさるが、耳を掠めた漣の音に、心とは反対に足が前へ出る。
止めなくては
4/28/2025, 11:08:01 AM