「かーてん……?」
アレか、語源のラテン語、「覆う」だの「器」だの、「人の和」だのの意味があるらしい「Cortina」のハナシでもすりゃ良いのか。
某所在住物書きは部屋のカーテンをパタパタ。揺らしながら葛藤して苦悩した。
「それとも、なんだ、『皆さん緑のカーテンは何植えてますか』とか……?」
不得意なエモネタでこそない今回。とはいえ、窓覆うこの布について何を書けるものか。
ひとまず物書きはネットの海に、カーテンの語源と種類と値段の幅を問うて、物語を組もうと画策する。
――――――
遮光・遮熱カーテンを使っている筈なのに、窓から日光と共に入ってくる最後の残暑がダイレクト。
使い方が違うのでしょうか。 さぁ、何とも。
という物書きの近況は置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。
前回投稿分からの続き物。最近最近の都内某所で、食と生活で不摂生しておった男が、ラーメン食べる直後に脳卒中、詳しくは脳出血を起こしました。
今はこの男、麻酔の関係でグースピ寝ていますが、
程度が軽く、なにより初期対応が迅速で適切だったために、後遺症はリハビリでなんとかなりそう。
男の嫁は、お医者さんから説明を聞きました。
ところでこの病院、セラピーアニマル在住かしら。
狂犬病・エキノコックス対策済みの、かわいくて毛並みの良い子狐が病室におるのです。
患者の男にピッタリくっつき、布団の上で狐団子になったり、男の頭で毛づくろいごっこをしたり。
どうしたのでしょう。 気にしてはなりません。
さて。
「良かったね。軽症で済んで」
ある日、男の病室に嫁の友人が見舞いと状況確認にやって来て、カーテンに噛みつきぶらぶらブランコで遊んでおった子狐を見て一瞬ビビった後、
「ヤバみで私も卒倒しかけちゃった」
やっと心が落ち着いてきた嫁の隣に、パイプ椅子持ってきて寄り添います。
何故病室の子狐に、嫁の友人がビビったのか。
子狐に見覚えがあったのです。
何故病室の子狐に、見覚えがあったのか。
稲荷神社在住で、近所の茶っ葉屋さんの看板子狐をしている個体に、バチクソ似ていたのです。
おかしいな。なんでここに居るんだろ。
「一番早ければ数週間で退院できるってさ」
ぶらーん、ぶらーん。カーテンに噛みついてブランコしている子狐は、そんな考察知らん顔。
揺れる遮光・遮音で遊んでいます。
「『軽症で済み対処を最短で為せたのは、奇跡か神様のご利益のようなものだ』って」
神様。カミサマだって。すごいよね。
嫁はお医者さんが言っていた言葉を友人に共有し、
子狐はそれらすべてを、ぶらーん、カーテンに噛みつきブランコごっこして、聞いていました。
カミサマ? 友人がチラリ、子狐を見ます。
ぶらーん。 子狐とチラリ、目が合います。
子狐コンコン「キツネはカミサマじゃないよ」と、言っていそうな無関心っぷりですが、
真実はそれこそ、神のみぞ知るのです。
「ところでさ。聞いてもらっていい?」
「なにさ」
「多分麻酔が今切れかけてるんだろうけどね、いや実際にこういうことが起こり得るのか、だけどね」
「うん」
「ウチの夫、さっきからうわごとみたいに、狐がどうとか、接続不良がーとか、言ってるの」
「せつぞくふりょう」
「どゆこと、っていう。電波障害か何かかな?狐がどっかの基地局傷つけてるとか?」
「さすがに、それはないでしょ」
「だよね」
「だよね……」
取り敢えず無事で良かった、よかった。
白い病室のベッドの隣に、ふたりしてパイプ椅子持ってきて座ってる女性陣は、揃って安堵のため息。
ぶらーん、ぶらーん。病院のセラピーアニマルだか稲荷神社在住だか不明な子狐は、相変わらずカーテンに噛みついて、ブランコごっこして遊んでおったとさ。
10/12/2024, 3:08:27 AM