"揺れるキャンドル"
ある森の奥のこと。
私は利き手にカンテラを持って、石造の建物を訪ねていた。
辺りは静まり返り、手元から照らされる光だけが頼りの夜だった。
人の気配がなく呼びかける勇気が出ない私は、重厚な扉に手をかけて押し込む
中に入ると一層暗く、腕を伸ばして照らしてみると赤い絨毯が敷かれていることがわかる。
相変わらず人の気配が感じられず、埃の一つも落ちていない。
威厳を持った佇まいの家具たちが一斉に私を威嚇する。
私は怯みながらも扉を閉め、足を進める。
石造の建物は響きやすく、足音と呼吸音、カラカラと揺れるカンテラの音がこだましていた。
私が目指しているのはただ一つ。
ひっそりと隠れるように位置付けられた階段を見つけ出し、深く呼吸をした後に足を一つ降ろす。
心地の良い音がコツコツと嫌なほど響いて、足元から押し返されるような振動が伝わってくる。
漸く辿り着いた地下では長い廊下になっており、緻密な燭台が整然と並べられている。
白く濁った大きなキャンドル達は、私に気づくなり一斉に火を灯して、歓迎してくれているようだった。
ゆらゆらと話しかけるキャンドル達に私は怯えていた。
私はただ冷静に、慎重になりながら地下の奥を目指した。
12/23/2025, 10:51:38 AM