『どこまでも続く青い空』
あぁ、…口の中が血の味がする。身体に力が入らないし、もうどこも痛くない。さっきまで、身が焼けるように痛く、傷口からジクジクと熱を持っていたはずなのに今では、それが嘘だったかのように無い。
死因が失血死なんて、笑えるなぁ。僕の知り合いのお節介焼きに言ったら、全然笑えないって怒られそうだけれど。ふと、首を動かして隣を見る。彼もまた、地面に転がされて、死ぬ寸前と言ったところだろうか。
「まだ、生きて、ますか…?」
「生きてる、なんとか、な…だが、時間の、…問題だろう。まもなく、俺は死ぬ…」
掠れた声でそう答える彼は、かなり生気のない目をしていた。…今なら言えるだろうか、墓場まで持っていってやろうかと考えていたが、どうせ死んでしまう身だ最後くらい好きにしてもいいだろうと、決心し彼の目を見る。
「死ぬ、まえに、聞いてください、…」
「あぁ、…手短に、頼む…」
「僕、…貴方が、好きです。伝えるのは、こんなにも、…土壇場、ですけど…」
言えた!、なんとか言葉にする事が出来た。当の言われた本人は、目を数回、瞬いた後…僕の目を見つめ返してくる。
「奇遇、だな……おれ、も…だ……、」
彼は、最後に僕に向かって嬉しそうに微笑んだ後。ゆっくりと事切れてしまった。それを聞いた僕は、どうしようもない多幸感に包まれた。ゲホッと一度咳をすると、血が出てくる感じがする。ゆっくりと視界が黒く染まっていく、ふと、空を見ると、どこまでも青い空が広がっていた。
こんな、死なら悪くないと、一人。笑いを溢し、重たい瞼を閉じた。
叶うならば、また、彼と一緒の世界線で会いたい。
今度は、恋人として、…。
10/23/2024, 3:27:40 PM