崩壊するまで設定足し算

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遅くなりました。なう(2024/11/25 02:22:27)
▶22.「夫婦」

21.「どうすればいいの?」
20.「宝物」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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仕入れ屋との道すがら。
森の浅い部分は人の立ち入りが多く獣の類も少ない。

‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、まだ話す時間はあると判断した。
「聞いてもいいだろうか」
「おう、なんだ」

「どうして薬草の場所を教えてくれるんだ」
「そんなことか。まぁ暇つぶしにはちょうどいいな」


仕事で言えば棲み分けできるからだ。俺の専門は食材で、しかもこれから行く所よりもっとやべえ場所に生えてるもんだ。だからあんたに教えても平気なんだよ。
俺の事情から言えば、俺には妻がいるんだがよ。
昔に高熱を出したことがあってな。
この辺の浅い場所に生えてる解熱の薬草じゃ効かなかったんだ。
薬師に連れてったら熱が下がらなきゃどうにもならねぇで死ぬって言われてよ。
今回の薬草は、その薬師から教わったんだ。森の深い所に生えるやつなら治るってよ。ただ取りに行くやつが少ねぇんだ。あんときは俺が取ってきた。

俺はあいつが死ぬのは嫌だった。
んで、そんなやつは他にもいるだろ?
だから薬草を取りに行けるやつが増えれば、困るやつが減る。
そういうこった。

「そうだったのか」


この国の人間の平均寿命は50〜60歳、
15歳で成人し3〜5人ほどの子供を持つ。
種の保存という観点から見れば、子が独立したあとまで夫婦が一緒にいる必要はないはずだ。

人形には、何故わざわざ夫婦という縛りを作ってまで他人と一緒に居ようとするのか分からなかった。

だが仕入れ屋の話から、添い遂げる相手というものが大切な存在なのだと‪✕‬‪✕‬‪✕‬は感じ取った。
もちろん1人の話から判断するのは早計だし、
何事にも例外はあるだろうが。


「あなたの奥方は、どんな人なんだ」

人形は、時間の許す限り夫婦について知ろうと話を聞き続けた。

11/23/2024, 9:33:02 AM