星乃 砂

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【狭い部屋】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
 [5/27 月に願いを
 [5/28 天国と地獄
 [5/30 ごめんね
           続編

登場人物
 鬼龍院 加寿磨
 (きりゅういん かずま)
 金城 小夜子
 (きんじょう さよこ)
    玲央 (れお)
    真央 (まお)
 園子 (そのこ)
 椎名 友子(しいな ともこ) 


「母さん、大丈夫ですか?」
今まで住んでいた家を後にして加寿磨は母の事が心配で仕方なかった。
母は片田舎の地主の末っ子長女として生まれた。
やっと授かった女の子、その為甘やかされわがままな娘に育った。
父との馴れ初めはわからないが、ほとんど勘当状態で結婚したらしい。
母はそれ以来、実家へは帰っていない。
結婚直後は6畳一間の狭い部屋で食べるのがやっとだったそうだ。
父は、母の為に必死になって働き10年かけて自分の会社を設立た。
ボクが生まれたのは、それから2年後だ。
会社は順調に業績を上げ、あの崖っぷちの家を購入した。
古い家ではあったが2階の部屋から見える景色を母が気に入って決断したようだ。
その後、事故で父を亡くし、ボクも記憶を無くし歩けなくなった。
それからのボクはわがままになり、よく母に当たっていた。
そう、あの子に会うまでは。
ボクが奇跡的に立つことができ、歩く為のリハビリをしだしてからは母も明るくなってきたと思う。
だが、今はまた俯くようになった。
これからはボクが母さんを支えていかなければ...。
でも、学校にも行っていない15才のボクに何が出来るのだろう。
そんな事を考えているうちに、会社の人が手配してくれた引っ越し先に着いた。
「母さん、着きましたよ」
「これからここに住むのですか?」
それは2K(6畳と3畳にキッチン)のアパートだった。

           つづく

6/5/2024, 8:16:37 AM