バイクをふたり乗りで走っていると、鐘の音が耳に入る。青年はその音が気になってバイクを停めた。
「どうしましたか?」
「いや……音……聞こえた?」
「音?」
恋人はクエスチョンマークを頭に飛ばしつつ、首を傾げる。
「寄り道していい?」
青年はこの道に心当たりがあった。あの時は一人で来たから、彼女と行きたくなったのだ。
彼女はふわりと微笑んで頷く。
「ありがとう」
青年は目的地を変更して、バイクを走らせた。
風が走り、林を抜けていく。
そこは、小さな教会。
駐車場にバイクを止めると、ふたりともヘルメットを外した。
「ふわ、かわいい教会です……」
「多分、さっきここの教会の鐘の音が聞こえた気がしたんだ」
「気がつきませんでした……」
ふたりで、ゆっくりと教会へ足を向ける。
青年が初めて来た時と同じように扉は閉じたままなのは残念だった。
そして、彼女の手を取る。
彼女は優しい視線を向けてくれた。
「いつか……ね」
ほんの少し、青年は耳が熱くなりなりながら、照れつつ彼女に笑うと、その言葉の意味を理解した彼女の頬が赤くなった。
そして彼女の手が、しっかり青年の手を握り返してくれる。
紅潮した頬と、愛らしい微笑みと共に。
「……はい、いつか」
おわり
お題:鐘の音
8/5/2024, 2:01:09 PM