ある日郵便受けを覗くと、
差出人の名前の無い手紙が入っていた。
宛名には『10年前の自分へ』と書かれていた。
10年後世界は滅びるらしい。
手紙には古今東西の終末論を網羅したような未来と、
悲劇的でも英雄的でもない
凡庸な私の死に様が綴られていた。
たちの悪い悪戯だと思い、ゴミ箱へ捨てた。
それだけの出来事だった。
しかし今でも時々、思いだすことがある。
あれが本当に未来からの手紙だったとして、
私は自分に何を伝えたかったのだろう。
安心しなよ、なのか
頑張れよ、なのか
くだらないと思いながら、
本当は終末論に期待していた過去の自分を想う。
今も10年後も、それは変わらないのかもしれない。
答え合わせの日が来るのを、
あの頃の気持ちで待っている。
『10年後の私から届いた手紙』
2/15/2023, 1:56:33 PM