微熱
玄関先で爆睡して、起きた時にはもう遅刻だった。つけっぱなしの腕時計を見て、ため息を吐いてから、やけに揺れる視界に違和感を覚える。
「にゃお」
横から声がしたので振り向くと、灰色の塊が動いて、早く飯を出せ、と言いたげにこちらをじっと見つめていた。
「ちょっと待ってね。」
立ちあがろうとすると、くらり。また床に突っ伏してしまった。この感覚には覚えがある。まさか熱?無理をしすぎたのだろうか。
またため息を吐いて、寝転んだままで横を見た。猫が、えもいわれぬ目つきで佇んでいる。
「ごめん。ご飯とってこれる?」
まあ無理だろうな。そう思いながら神頼みで呟くように言うと、しっぽの先が少し揺れて、キッチンの方へ歩いて行った。
驚きながら帰りを待つと、がさごそ、ガタンと音がなって、袋を咥えて帰ってきた。
「ふはっ、それ、私のお菓子だよ……。」
持ってきたのはポテトチップス。私のご飯を取って来いって言ったんじゃないんだよ。愛おしくて目を細めて笑うと、その子はポテトチップスを床に置いて、なんにもわかってなさそうな顔をしていた。
11/27/2024, 5:03:08 AM