「涙」
泣くことは、弱さの象徴である。悲しい時こそ歯を食いしばって、笑っておどけて笑わせられて一人前。誰かの前で泣くことなど言語道断。仲良しのあの子は、辛いことがあった時、私の隣で泣いてくれる。きっと私のことを信用してくれているからなのだろうし、それはとても嬉しく思う。ただ、それと同時に、彼女を本心から慰めると同時に、こんな弱い人間にはなりたくないとも思う。最低で結構、友を信用していないと罵ってくれて結構。舐められたくない、弱い人間だと思われたくない。強くなりたい。強くありたい。
そんな私が、今こうして人前でボロボロと涙を流していることに、どうか言い訳をさせてほしい。3月の下旬、春、別れの季節である。何かというと、部活の先輩が、引退してしまうのだ。丸2年、本当に本当にお世話になった先輩方が、私の前からいなくなってしまう。そのことがどうしようもなく寂しくて悲しくて、プライドなんて丸めて捨ててしまうくらい、涙が止められなかった。辺りには私と同じ様に、目からボロボロ水滴を溢しながら鼻を啜る1、2年生が座っていて、その前方では先輩方が花束を受け取っていて。まっすぐなその背中は、私が2年間追いかけ続けた背中だった。最後まで遠く及ばなかったけれど、少しでも追いつきたいと、手を伸ばし続けた背中だった。あぁ、置いていってしまうのか、先輩方は。こんなにボロボロで、前すら見えないような後輩達を。
大きな花束を抱えた先輩たちが、揃ってこちらを向く。2年部長の合図で、私たちは一斉に立ち上がる。あぁ、涙声が恥ずかしい。それでも、この言葉だけは言わなくちゃ。涙を拭って、こちらを微笑みながら見守る先輩たちと目を合わせる。今までの宝物のような思い出が頭を駆け巡り、視界が滲むのをどうにか堪えて、部長の合図に合わせ大きく息を吸い込む。「いかないで」も「あとは任せて」も言えないけれど、どうか、この言葉だけは届いてほしい。大好きな先輩たちへ。ありったけの思いを、涙声にのせて。
「ありがとうございました!!」
3/29/2025, 12:05:56 PM