カラフルなペンで書かれた丸っこい字。
ほぼ毎日会っているのに何をそんなに、と言うくらい何枚もファンシーな便箋を使ってやり取りは続いた。
だいたいはその時ハマっていたいわゆる〝推し〟のこと。でも時々、ひどく真面目な話もした。
カラフルなペンで、丸っこい字で。
家族や学校、職場での悩み。自分の心や体のこと。
ギクシャクした日の謝罪。
それはメールやSNSで今もやっていることではあるけれど、手紙として形に残っていない分、記憶から消えてしまうのも早いだろう。
真面目な事でも、推し語りでも、どんな事を書いても締めは「じゃあまたね、bye bye·····」。最後には開いた手のイラストを添えていたと思う。
ネットもSNSも無いあの頃。
クセのある自分の字は今ほど嫌いではなかった気がする。書かれた文字も、内容も、今とそれほど大差はない筈なのに、どうしてこんなにも愛おしく懐かしく思えるのだろう。
重ねた年のせいなのか、それとも手掛けた手間の差なのか。
久しぶりにペンと便箋を取り出してみようかと、なんとなく思った。
END
「bye bye ·····」
3/22/2025, 3:41:23 PM