300字小説
満月と三日月
その四角い茶色の箱は俺達にとって、お宝の山だった。
床に散らばる白い米粒をつまみながら、更に奥へと進む。
「今日は何が出るかな?」
突き当たった透明な壁をかじりとる。この向こうには必ず美味しいお宝がある。
「おっ!!」
出てきたのは茶色で塩っぱくてカリカリするもの。その次は甘くてサクサクするもの。それらを口いっぱいに頬張る。
突然、暗い空に金色の丸い月が二つ上がった。トンと何かが近くに飛び降り、鋭い三日月がいくつも降ってくる。
「にゃあぁぁ!」
三日月を必死にくぐり抜ける。俺達は茶色の壁を駆け登ると、家と続く排水口に飛び込んだ。
「ミケ、どうしたの? ヤダッ! 仕送りのダンボールの中身がネズミにかじられてるっ!!」
お題「三日月」
1/9/2024, 11:36:35 AM