わをん

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『ベルの音』

教会の鐘が鳴る。誓いの口づけを済ませた新郎新婦はフラワーシャワーを浴びながら集まった親族友人たちにしあわせと喜びを振りまいている。みなきれいに着飾って笑顔ばかりで、まぶしくて近づけない。胸に繰り返し思い出されるのは花嫁となったあの子と小さな頃に交わした約束。日陰者の自分にあの子をしあわせにできるはずがないとわかっているのに、早く立ち去らなければと思うのに、足はその通りには動かなかった。
視線に気づいた花嫁が驚きに満ちた顔をしたあとにブーケを投げ捨てベールを投げ捨て真っ白なドレスを揺らして駆けてくる。早く立ち去ればよかった。
「私を、攫って」
その手を取って、言葉を受けた足はなんの迷いもなく走り出してしまう。

12/21/2023, 3:55:38 AM