六月の帰路

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白。
創る時に一瞬にして死んでしまった。
それは放たれた血の花のように
何者かに殺された跡は誰にも気付かれずに、
ただハンカチーフで拭う跡が見られた。
ただスケッチブックに飛び散った血溜まりだけが
作品として残されていた。

「ええ、私が見たのは真っ赤な血溜まりでした。
 絵の具やインクなどではなく、黒と混ざりあった血。
私はそのような血文字をみたことがありません。」

ベッドに残されていたはずの血痕は
跡形もなく黒く塗り潰されていた。
それは信号に
それは壁に飾られたキャンバス
足跡のような絵画

みな蝉の言葉を忘れたように話していた
なにかがおかしくは無いかと
あの人は綺麗事だと笑った。
ただ周りから囲まれるムカデ
写真のあなたがいた。

なにかが分からなくなっていた。
青いスープを飲みたくないみたいに
それは自然な事だったようだ

''献身的だったんだよ''
それらの肉片はそういうことを言っていたような。

その方が良かったんだろう、
猫は首が取れていた
それはこちらを向いて睨みつけている
「産まれる前はしあわせだった」
そうやってアフレコした。

創作物であり、何をしてもいいのだ。
そこにいたアダムとイブは創作物だった。

甲羅を溶かしたことが辛かったと、
一瞬にして息を取り戻し、甲羅を元に戻している。
焦っている様子が気持ち悪かった。

教会にいたあの人も
吐かれていたムカデも
みんなもみんな、
そう感じていたよ

体に埋め込まれた創作物は
そう書いてあるから
そう言うしかないのだ

その方が良かったんだろう
そうやってみんなが創作物を笑うしか無かったのだろう
後ろ側にオルゴールを適切に鳴らしたと言えば
みなは納得して涙を流して造られていく

「あぁ、悲しいね。
はい、これでおしまいね。
さぁ、帰ろう。」


あの本が塗りつぶされる頃
蝉が泣いている。




9/24/2022, 1:51:38 PM