空月 海

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最近私はアルバイトを始めた。内気な私は誰とも上手く話せず、ただ時間だけが過ぎ去っていく。
家に帰って「ただいま」って、何回言っただろう。
誰もいないのに、誰かいてくれてると期待してしまう。「ただいま」という度に自分が嫌になる。切なくなる。苦しくなる。
今日も、暗い部屋の中で一人ベッドに眠る。
「ガリガリ、ガリガリ」と、とても不快な音が聞こえて目が覚めた。時刻は…まだ一時を過ぎたあたりだ。私は音の聞こえる方へと耳を傾け、足音立てずにそっと移動した。窓の方だ。カーテンを開くとそこには、一匹の猫がいた。よく見ると、足を怪我している。
外は、台風の接近で雷雨になっていた。私は見捨てるわけにもいかず、野良ではありながらも家の中に入れてあげた。おつまみ用に取っておいたお魚を半分あげた。それからしばらくして夜が明け、猫はすっかり元気を取り戻したのか、窓を開けた途端に出ていった。
「行かないで。」私は何度もそう言った。
まだ薄暗い部屋の中で一人、ただ泣いた。泣くことしか出来なかった。

10/24/2024, 4:01:21 PM