シロツメ ナナシ

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『泡になりたい』


「……泡 みたいに、
 消えて…なくなりたい―――」


長い…長い沈黙
悩みに悩んだであろう
思い悩んだ表情

かつて
1番信じてる!と言ってくれた私にさえ
今ここで
もう一度信じなおさなきゃならないほど
言い淀むほどなのだから
その心の葛藤と覚悟は…
友がその一言を言うための心は、
この言葉の重みと勇気は、
一体どれ程のものだったのだろうか

今の友が抱えてる心の傷を
私は必死に想像することしか出来ない


口から全てが出てくるような嗚咽感か
心臓をナイフで刺されるような痛みか
ゾウに踏み潰されて死ねない苦しみか
水の中に何時間も入れられて生き苦しむか


その一言を発してから
私は

「……そうだったんだ」
私は色んな思いを込めて言った


少しして、

ゆっくり……


ゆっくり…………


友の表情が、崩れていく―――



その話す勇気からくる緊張から
本人的に開放されたからだろうか

友は大声で泣き出し、
怒涛のように思いの丈を話し始めた

最近あった辛いことから
言えなくて辛かった気持ち
過去からずっと押さえ込んでた考え方
自分や周りとの差
中には自分に対する
大小様々な不服もでてきたりもした

目の前に、
本来の友 がそこにいた

言い終え、聞き終え、
泣き疲れ、冷静になり

「……ごめん」と

なんで?

「酷いこといっぱい言った…」

それは自分にだけじゃないし、
自分もあなたに言ってきたことある
それが、怒りの感情に乗ってただけ

「……負の感情で
 八つ当たりみたいに言うなんて…」

怒りや憎しみは
負の感情なんかじゃないよ
列記とした人間らしい感情だよ
友はそれを今日まで
ほとんど使って来なかったから
そのコントロールが上手くないだけ

あなたに、人間に
負の感情なんか多分ないよ
その使い方が、
上手じゃない人がちょっと多いだけ

使ったら…ちょっと落ち着いたでしょ?

「……うん、ごめん」

ありがと がいいなぁ

「………あんがと」

あいよ


「…でも、どうして?」

なにが?

「…どうして受け止められるの?」

忘れた?
ちょい昔にこっちの気持ちを
受け止めてくれてるんだよ?
よくよく似た気持ちをね

「………そうだったっけ?」

そういうこと

あとこれもお返し

「…?」


世間が変わらないのが悔しいけど
―――でもお互い、
ひとつ 強くなれたかもね


〜シロツメ ナナシ〜
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8/6/2025, 5:37:18 AM